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ネイティブディメンションズモデルの 鈴木氏セミナー コラム「デザインはこう作る」

ネイティブディメンションズ 鈴木氏セミナー 「デザインはこう作る」

鈴木氏は、デザインを単なる「かっこいいもの」ではなく、「目的を整えること」と定義し、限られた予算の中で性能・意匠・機能のバランスを取る設計の考え方について解説しています。

 

 自己紹介と設計への考え方

鈴木氏は新潟で16年間、小さい家専門の設計事務所を営んでいます。ミニマリストではないが、「物欲」と「予算」のバランスを取るために小さい家を専門としました。

  • 業務内容: 小さい家の設計を主軸に、全国の同業者へ構造計算、外皮計算、プランニングなどのサポートも行っています。
  • 設計の動機: 建築が好きで仕事をしているのではなく、家族と仲良く過ごしたいという思いが設計の根底にあります。そのため、設計を依頼する顧客は、「小さい家に住みたい」というより、「鈴木さんのような暮らしがしたい」という共感を求めるケースが多いのが特徴です。
  • 対象とする聞き手: 予算が無限で自由に意匠を追求できる人には、本講演は響かない可能性があります。本講演は「予算に限りがあり、性能と意匠と機能のバランスが必要」と考えている方を対象としています。

 

 限られた予算の中での「一体化」設計

限られた予算の中でデザインするとは、つまり「限りある予算の中で目的を整理する」ことです。

予算の分断ではなく一体化を目指す

かつての設計では、間取り、構造、断熱など、各要素の予算が分断され、互いに予算を取り合う「予算の取り合い」になっていました。そうではなく、間取りの「一体化」を目指すべきです。

  • 意匠と構造が一体化した間取り
  • 意匠と温熱が一体化した間取り
  • 構造と温熱が一体化した間取り

究極的には「意匠・構造・温熱が一体化した間取り」こそが、限られた予算を最大限に活かす方法であり、「一石二鳥、一石三鳥」を狙う感覚で設計を進めます。

 

性能そのものを造形のテーマとする設計

鈴木氏の設計の根幹にあるのは、「肉は骨についている」という考え方です。

骨格が美しければプランも美しい

  • 建物において、骨格(構造)が美しければ、柱は自然な位置に収まり、自然なプラン(間取り)が出来上がります
  • プランを先に無理に押し込むから、不自然な位置に柱が立ったり、構造計算で問題が出たりします。
  • 構造はデザイン要素の一部であり、邪魔なものではありません。構造材をあえて見せる(現しにする)ことで、空間をデザインする要素として積極的に活用します。例えば、梁を間接照明の照明板として活用し、造作工事を不要にするなど、「一石二鳥」の工夫をします。
  • 構造が空間を形作り、肉付けの部分(機能)を造作が担う、という役割分担で設計を進めます。

 

プランニングの前に配置計画

間取りを作る前の全体計画(プランニング)では、まず配置計画が重要です。

  • 街並みを作る社会的責任: 建物は敷地だけでなく、「街並みを作る社会的責任」があります。街に馴染み、その地域の価値を上げるようなボリューム、屋根形状を意識します。
  • 街並みを作る窓: 敷地の内側からだけでなく、遠くから見た外観を想像し、「あそこに窓があったら可愛いだろうな」というイメージから窓の位置を決め、それに合わせて間取りを作ります。
  • 「ただいまの動線」の意識: 道路を挟んでどちらから帰ってくることが多いかなど、「ただいま」という動作の動線をイメージし、帰宅時に一番最初に見る建物のプロポーションが美しくあるようボリュームを出していきます。

 

構造区画によるコストダウン

鈴木氏の構造計画は、1階と2階の耐力壁や柱の位置を揃える「構造区画」による設計が基本です。

  • 1階と2階が乗っかる大雑把な四角(構造区画)を設定すれば、その内側は自由に間仕切りやレイアウトが可能です。
  • この構造計画は、基礎の設計を単純化し、基礎のコストを大幅にダウンさせることができます。
  • 基礎で削減できたコストを、キッチンや無垢フローリングなど、顧客がこだわる部分の予算に回せるようになります。

 

「標準仕様論」— 最高ではなく最適を目指す

標準仕様は、「流行や市場の中央値」ではなく、「自分の当たり前を設定する」ことです。

  • 自分が最も作りたい家のバランス(意匠、構造、温熱)を取り、それを標準仕様として発信します。
  • この結果、顧客は鈴木氏の発信する設計(例: ミニストックシリーズ)に共感して依頼に来るため、「あの設計にしてほしい」というオーダーになり、設計者は常に自分のやりたいことを発信し続けられるというメリットが生まれます。

 

外皮性能は設定しない?— エコロジーとエコノミー

鈴木氏は外皮性能(UA値)自体を標準で設定していません。その代わり、総熱損失量(換気も踏まえた熱損失の合計値)を重視します。

  • エコの定義: エコ(Eco)にはエコロジー(環境配慮)とエコノミー(節約・経済性)の2つの意味があります。
  • 総熱損失量100Wの目安: 鈴木氏は、建物の規模が変わっても、この総熱損失量がほぼ同じになるよう断熱性能を調整して設計しています(例:16坪/UA 0.315と28坪/UA0.283で総熱損失量がほぼ同じ)。
  • 小さい家はエコノミーに優れる: 小さい家(16坪)は、UA値は(28坪に比べて)悪くなりますが、総熱損失量は同じであるため、断熱材にかかる費用が安く済みます。性能は「そこそこ」でも、小さい家の方が「エコノミー(節約・経済性)」に優れている、と捉えています。

 

鈴木邸の実例(そこそこの性能)

鈴木氏の自宅は、そこそこの断熱性能(UA 0.32〜0.34程度が多い)と必要最小限の設備で設計されています。

  • 設備: 太陽光3.6kW、空調は6畳用エアコン2台、換気は壁付けのパイプファンを使用。
  • 光熱費実績(年間):
    • 電気代(売電相殺後): 年間885円(ほぼゼロ)。
    • ガス代(給湯): 年間約75,000円。
    • 総光熱費(年間): 約126,000円(月平均1万円程度)。
  • 室内環境: 猛暑日(外気温40℃超え)でも、エアコンを稼働させれば22℃〜24℃の範囲で安定し、絶対湿度もほぼ一定に保たれています。

結論として、最高(ハイエンド)を目指す必要はなく、最適を目指すことが重要です。最高を学ぶことは大切ですが、その知識をもって自分のやりたい最適を知り、標準仕様とすべきです。

 

機能が生み出す造形(理由付け)

構造が空間の骨格を作り、機能(肉付け)を造作が担います。この「機能」にこそデザインの理由が詰まっています。

  • 「理由のないデザイン」はない: 鈴木氏が設計する家では、キッチン、玄関、リビング、洗面所、2階の空間など、すべてに具体的な「理由」が数多く埋め込まれています。
  • 小さい家ほど理由が必要: 小さい家は、その隅々まで「理由」がないと設計できません。大は小を兼ねるという発想が通用しないため、一つ一つの空間や造作に必然性が求められます。
  • 理由付けがデザインとなる: これらの「理由」を一つひとつ解決した結果が、その空間の形(造形)となります。

 

デザインとは価値観の共有

デザインに絶対的な正解はなく、お客様とどの方向から見るかという「価値観の共有」が大切です。お客様と異なる方向を見て設計しても、良い結果にはなりません。

鈴木氏の講演は、最先端の技術ではなく、過去のセオリー(基本)を掘り起こし、それを最適化する設計手法を提示することで、参加者の価値観や視野を広げることが目的です。

 

このセミナーを開いた人

ネイティブディメンションズ 鈴木 淳

ネイティブディメンションズは、小さい家専門の設計事務所です。
スペースと機能を最大化するスマートなデザインの決定に焦点を当てることでこれを実現します。
耐久性、エネルギー効率、コスト効果をデザインに重視しています。

ネイティブディメンションズモデルはコチラ
ネイティブディメンションズのウェブサイト

暮らしとともにしつらえていく楽しみ「ハーフ住宅」とは

ハーフ住宅は、高品質の骨格と外装、水道、電気、ガスと、法律的には住宅として最低限「暮らせる」状態でお施主さんに引き渡す住宅です。 世界の住宅の標準ともいえるスケルトンインフィル。
柱などの木が見えるむき出しの状態から、みずから中を自分好みにしつらえていく。
つまり、家を自由にデコレーションしていくことができる住宅です。

コンクリートの打ちっぱなし住宅の木バージョンともいえる「木の打ちっぱなし住宅」ともいえます。

High quality 高気密・高断熱・高耐震の高い品質
More than reasonable 価格を低く抑えられる
Do it yourself 自分色に仕上げられる

人気の一級建築士が設計した、これら3つのコンセプトを持った複数のプランの中からお選びいただけます。

コストを抑えながら高性能住宅が手に入る反面、お施主さんにも「しつらえる覚悟」を持ってもらう必要があります。

なので「内装まで全て出来上がった状態の住宅が欲しい」「できるだけ自分で手を加えたくない」という方には正直オススメできません

逆に、「自分好みに自由に作ってみたい!」「ちょっとぐらい不格好でも逆に私らしさが出ていいかも!」 「高気密・高断熱・高耐震で建てたい!でも、できるだけコストを抑えたい!」

そんな方にピッタリです!
「ハーフ住宅」を、ぜひ夢のマイホームの選択肢の一つにしてみてはいかがでしょうか?

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